ボランティア

クリケットで深めた絆 森田小学校が開校

バングラデシュの首都ダッカから車で北東へ約2時間の町ドッキンデオラでその日、奈良県のボランティアキャプテン森田さとみさんは子供たちとクリケットに興じていました。少女の頃に戻り、思い切り打って投げて…。
2020年1月26日にエルセラーン1%クラブとNPO法人「PUSバングラデシュの村をよくする会」との共同事業で新校舎が完成した森田小学校の開校式には元気と喜びがあふれていました。


都心部は人と車、自転車で溢れかえっていますが、少し走ると郊外にはのどかな農村の風景が広がります。


道中の村でも住民たちはのんびりとしていて、ゆる~い雰囲気が漂っていました。


小学校へ到着し、バスを降りると塀の向こうから「ようこそ、モリタサトミさん」の大合唱が何度も聞こえてきました。ただでさえ涙もろい森田キャプテンは早くも泣き顔に。門をくぐって生徒たちの人垣の間を歩くころには表情がくしゃくしゃになりました。



道路が予想外に空いていたためエルセラーン一行の到着が早く、村の重鎮たちが揃う前に主役が主賓席に着いてしまうというハプニングも。それでもひとりひとりに生徒たちから可憐な花が贈られ、式典はスタートしました。


バングラデシュはイスラム教徒が約9割を占める国ですが、この村はイスラム教徒65%、ヒンドゥー教徒35%で、ダッカなどとは住民の趣きもやや違います。式典冒頭で生徒代表の男の子がイスラム教の聖典・コーランを、女の子がヒンドゥー教の聖典・ギータ―をおごそかに暗唱してくれました。



伝統校ならではでしょうか、国旗掲揚のプログラムもありました。エルセラーンのメンバーと学校関係者で緑地に赤い丸のバングラデシュ国旗をポールに上げていきます。



この小学校はバングラデシュが独立して間もないころに創立した名門校で、これまでにも優秀な生徒をたくさん輩出してきたとのこと。しかし政府にかけあっても新しい校舎が建たず、困っていたそうです。
あいさつに立ったスターングッディ校長は「私が赴任した当時は生徒の多くが教室の外で授業を受けていました。つらく悲しい経験でした」と振り返り、「今は立派な校舎があり、幸せな気持ちでいっぱいです。遠い日本から、この村まで来ていただき感謝いたします」と子供たちの喜びを代弁しました。


生徒代表の5年生、オリンドヘンくんも「雨の日も風の日も外で授業を受けていましたが、今は教室の中で勉強できます。いっぱい勉強して世界のいろんなところに行ってみたい。日本にも行きたい」と建物内で勉強できるありがたさを強調していました。


いよいよ主役・森田キャプテンがスピーチする番です。ホテルを出発する前のビデオ撮りは緊張で何度もやり直していただけに一同が固唾をのんで見守る中、実に堂々としたあいさつでした。
「みなさんと会えるのを楽しみに日本から来ました。うれしくて感動しています」
「これからも先生や両親のいうことを聞いて、この学校で友だちをいっぱい作り、勉強して夢をかなえてください」
「私と仲間たちはみなさんが立派に成長することを祈っています」
途中で生徒たちから「モリタサトミ、ウェルカム、ウェルカム」のコールも巻き起こりました。


堅苦しいセレモニーが一段落したところで、いよいよ交流の時間です。まずは生徒たちが練習を重ねてきた歓迎の踊りを披露してくれました。



これに負けじとエルセラーンの一行も歌と踊りでお返し。会場は一気に盛り上がります。


プレゼントの交換も和気あいあいとした雰囲気で…


テープカットは花吹雪が舞い散る中でおこなわれました。みんなが全身、花びらだらけです。


この開校式で特筆すべきは、クリケットの交流でした。旧イギリス領だったこの国ではクリケットが大人気のスポーツです。学校側のリクエストでクリケットの簡易セットもプレゼントしたのですが、子供たちがさっそく遊ぼうと催促。森田キャプテンが天性のお転婆ぶりを発揮したのがこの写真です。打って、投げて…。大活躍のヒロインでした。


子供たちもこの笑顔。楽しいひとときをきっと生涯、忘れないでしょう。



生徒たちにこのきれいな校舎でいっぱい学んでほしい、と祈りつつ、帰路につきました。


また会える日まで、さようなら。



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