その他ボランティア

海外の絵本紹介 第4弾「お月様は見ている」


忙しい年末年始。
ちょっとした息抜きに、海外の絵本をご覧ください。

エルセラーン1%クラブと提携する『公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(以下SVA)』は難民キャンプなどでの地域で、絵本を作成するなどの図書事業を展開しています。

今回はミャンマー・タイ難民キャンプでの活動として製作された「お月様は見ている」という絵本のご紹介です。
タイトルや表紙から内容を想像すると、びっくりするかもしれません。


むかしむかし、あるところにソースーとソーワーという二人の友達がいました。
ソースーはあごが四角く男らしい顔つきの強い男でした。
一方でソーワーは繊細な男で、お金をたくさん得ることのできる技術を持っていました。

しかし、二人はお互いに認め合っていました。彼らの家はそれほど離れていませんでした。
ソーワーには息子がいましたが、ソースーには子どもはいませんでした。


彼らは二人とも家族のためにお金を稼ぎに街へ出かけていきましたが、彼らの奥さんたちは家で待っていました。



彼らは街で何年間も働いて、家に持って帰るお金をためていました。



何年間も働いて家族がとても恋しくなってきたので、彼らは家に帰ろうと話しました。
そして、彼らは荷造りをし、家へと向かいました。



彼らの村へ帰るには、街から歩いて三日かかりました。
彼らは早朝に出発し、夕方まで一日中歩き、夜になると眠って休みました。



彼らが横になって眠っていた時、ソーワーは家に帰って家族に会えるのを考え、とても幸せな気持ちになっていました。
一方、ソースーはあまり嬉しくありませんでした。

それは、家族のためにたくさんお金を稼いだソーワーに比べて、ソースーが家に持って帰ることのできるお金はごくわずかだったからです。


二日目になり、彼らは朝早くから家へ旅を再開しました。
彼らは一日中歩き、あたりが暗くなったら足を止めました。彼らは夕食を食べ、眠りました。
ソーワーは、だんだん家が近くなってきて、もう少しで家族に会えると思いとても幸せでした。

一方ソースーは家族へ渡すお金がほとんどないためますます機嫌が悪くなっていきました。
ソースーは、友達であるソーワーのお金をどのようにしてもらうかを一晩中考え、まったく眠ることができませんでした。


次の日、彼らは夜明けとともに起き、歩き始めました。
ソーワーはあとほんの少しで家族に会えるので、ますます幸せな気持ちになっていきました。
しかし、ソースーは昨晩まったく眠ることができなかったので、あまり歩くことができませんでした。
そこで、ソーワーはソースーに尋ねました。
「友よ、今日はあまり元気に歩くことができないようだね。具合でも悪いのかい?」

ソースーは答えました。
「平気さ。でも昨晩はあまり眠れなかったんだ」
「もし歩くのに疲れたなら、君の荷物を持ってやろうか?」
「いいや、大丈夫だよ。ゆっくりなら歩けるからね」
しかし、この時ソースーは、ソーワーのお金をどうやって分けてもらうかをひそかに考えていました。
ソースーが元気に歩くことができないため、それに合わせてソーワーもゆっくり歩かなければなりませんでした。


暗闇が近づいてきたので、彼らは休むために止まりました。
その晩は満月でした。
ソーワーは、次の日には妻と子どもに会えるということを思いながらその月を眺め、とても幸せな気持ちになっていました。

しかし、ソースーはまったく眠れません。
彼はお金を得るためには何をすればいいのかを考え続けていました。
そして、友を殺すという考えがソースーの心の中に生まれてしまいました。


ソースーは、大きな棒を拾い上げ、ソーワーをその棒で殴り殺すために近寄っていきました。
ソーワーはソースーが近づいてくるのに気が付き、体をくるりと動かし、尋ねました。
「何をしようっていうんだ?」
「まったく眠れないんだ」
「なぜだい?もう少しで家族に会えると考えて、とても嬉しいから眠れないんだろう!」

「違うさ、実をいうと、僕は君を殺して金を奪うつもりだったんだ」
「お金ならすべて持って行っていい。でも殺しだけはしないでくれ。どうしても妻と子どもに会いたいんだ」
ソーワーは本気でお願いを繰り返しましたが、ソースーには届きませんでした。


ソーワーは、誰かに目撃者になってもらい、妻へメッセージを送らせてほしいとソースーに頼みました。
ソースーは言いました。
「ソーワー、君は誰にそれを頼みたいんだい?ここには誰もいないんだ。僕らだけだよ」
ソーワーは妻へメッセージを届けてくれる誰かを見つけるという希望を持ってあたりを見渡しました。
彼は誰も見つけられません。そして、彼は天を見上げ、月を見つめました。

ソーワーは言いました。
「お月さま、僕の妻と子どもにこう伝えてください。心から愛してる、とても会いたい。でも、僕のお金を欲しがっている友達のために、もう会うことはできません…と。お月さま、あなたが今夜見たことを妻と子どもにどうか伝えてください」
そして、ソースーは彼の頭を殴り、ソーワーは死んでしまいました。


ソースーはソーワーを土に埋め、大笑いをして言いました。
「月が自分の妻にメッセージを送ってくれると考えるなんて、ソーワーはバカなやつだ」

ソースーはお金や品物をすべて奪い、急いで家に向かいました。


ソースーはたくさんのお金を持って家に帰りました。
ソーワーの奥さんがソースーの帰りを聞いた時、彼女はソースーのところにやって来て尋ねました。
「夫はどうしたんですか?」

「ソーワ―はマラリアにかかり、長い間苦しんで死んでしまったんだ。彼が稼いだお金も、その治療費に消えてしまった」
それを聞いたソーワーの奥さんは大泣きをしながら家に帰りました。


ソースーは大きな家を建てました。彼は欲しいものはすべて買い、生活を楽しみました。



それは、月光がきれいな夜でした。
ソースーはベランダのイスに座ってくつろぎ、月を見て笑いました。
彼はあの日、ソーワーが月に向かって叫んだ言葉を思い出していたのです。
ソースーの笑みを見て、彼の奥さんが尋ねました。

「あなた、どうして笑っているの?」
「何でもないさ」
そう答えて彼は大笑いするので、彼の奥さんはその理由を聞かずにはいられませんでした。
「本当に、何でもないのさ」
彼の奥さんは何度も尋ねましたが、ソースーは同じようにしか答えませんでした。
そうして、奥さんは不満が募り、悲しくなってしまいました。


ソースーは奥さんの悲しんでいる顔を見て、同情してしまいました。
ソースーは言いました。
「君にだけは言うけど、絶対に他の誰にも言わないと約束してくれ」
「絶対に言わないわ」

そうして、ソースーは奥さんに彼が犯した殺人についてすべて話しました。
奥さんはそれを断固として秘密にしました。


それから何年か経って、ソースーはずいぶん変わってしまいました。
今では、彼は大酒飲みをし、女遊びの激しい人物になってしまいました。
彼が家に帰ってきた時、彼は必ず奥さんの悪口を言い、彼女を乱暴に扱いました。

「お前は1日中何をしているんだ?お前は怠け者のばあさんだ。村の人々のうわさ話をするだけで、1日中何もせずにここで座っている。お前は醜い魔女だ。いい所は何にもない」


これに対してソースーの奥さんは、彼の現在や過去の生活についての侮辱を含めて、攻撃的に言いました。

「あなたは大酒飲みで、女遊びがひどい人殺しよ。あなたは親友を殺して、聖人のふりをしているの。私たち、もう終わりよ。酋長のところへ行って、あなたの殺人について話してくるわ」





ことわざにもあるように、「犯罪は割に合わない」。
この村の人々は、この言葉が頭に浮かび、ついにソースーは逮捕され、残りの人生を牢獄の中で過ごしました。



彼のすべてのお金と財産は、ソーワーの奥さんとその息子に与えられました。



おわり


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