ボランティア

海外の絵本紹介 第7弾「金色の魚」

子どもの日なので絵本の話です。

エルセラーン1%クラブは公益社団法人シャンティ国際ボランティア会と提携し、途上国での教育支援事業をともに進めています。
共同事業は学校建設にとどまらず、絵本の作成や図書館の運営といった「図書活動」にも及びます。

今回はエルセラーン1%クラブへのご寄付により完成した絵本をご紹介します。
アフガニスタンの民話を元に作られた絵本「金色の魚」です。




むかしむかし、山はずれの広い荒野に、村がありました。
人々は広い荒野で家畜を育て、種をまき、作物を育てて暮らしていました。
広い荒野の中ほどには、流れの激しい、荒れた川がありました。
川は山から流れてきており、広い荒野をまっぷたつにわけていました。
村の人々はこの荒れた川にとても困っていました。







ある人は言いました。
「この川のせいで、私たちは向こう岸の村人たちとうまく行き来することができず、仲を深めることもできない。
しかも川はすぐそばにあるのに、農地にはなかなか水が届かない。
土地はカラカラに乾いたままで、雨乞いをしなければならない始末だ」







また別の人が言いました。
「役に立たないどころか、川は私たちの生活にとって、むしろ危険なものだ。
ひとたび洪水が起これば、私たちの土地も作物も家も壊してしまう。
それに、だれか溺れて命を落としてしまいかねない。とても危険だ」







一方、同じ川の向こう岸の村では、状況はまったく違いました。
人々は、川は神様からの恵みだと考え、その流れの激しい荒れた川に感謝していました。
支流のあちこちに橋を架け、豊かな暮らしをしていました。







ダムを造り、小川を掘り、農地に水を流して潤わせました。
川の流れをうまく管理し、堤防をつくり、洪水に備えていました。







ある日、川のせいでいつも困っている村の人々が集まりました。
人々はみんなで話し合い、荒れた川に対して、「もうこれ以上暴れて村を困らせないように」と警告することにしました。「『さもなくばお前を干上がらせてしまうよう、神様にお願いするぞ』と言ってやろう」と人々は言いました。







次の日、村人たちは川べりに集まりました。
そして、ひとりの老人が進み出て、川に村人たちの要求を伝え、警告しました。
しかし川は答えず、激しく流れ続けるばかりでした。
人々は「川はきっと、私たちの警告を恐れているんだ。だから何も答えないんだ」と思いました。







その時、突然一匹の金色の魚が、川から大きな岩の上に飛び出しました。
そして人々にこう言いました。
「お前たちの言葉はすべて聞いた。だがそれは間違っている。
私は長い間、川の奥深くにひそみ、お前たちの愚かな行いを間近で見てきた。
本来、この川は恵み豊かな川なのだ。ほら、見なさい!」

そう言って金色の魚は向こう岸の村の様子を見せました。
「お前たちの村にもたくさんの人々がいるのだ。
みんなで協力し、もっと知識を得て、一生懸命働けば、お前たちはこの川からたくさんの恵みを得ることができる。
いくら文句を言ったところで、何の恵みも得られないのだぞ」
と金色の魚は言いました。







「お前たちの中から有能な者を数人選び、向こう岸の村に送るのだ。
どうやって彼らがこの荒れた川を管理しているか学び、それをうまく活かしなさい。
明日からでも、一生懸命働き、橋を架け、ダムを造り、たくさんの小川を掘り、お前たちの枯れた土地を潤しなさい。
堤防を造り、洪水から人々の命を守りなさい。
そして向こう岸の人々との関係を築きなさい」







村人たちは金色の魚の言葉に、とても感激しました。
その時、ある村人が尋ねました。
「あなたもご存じのように、誰もが金を探し求めています。
どうしてこれまであなたは誰にも捕まることなくいられたのですか」







すると金色の魚は答えました。
「価値あるものは、世の中にたくさんある。私のような金色の魚はほかにもいる。
だが忘れるな、お前たちがきちんと学び、協力し、一生懸命働かなければ、川の災厄から逃れることはできない」







そう言うと、金色の魚は川に飛び込み、見えなくなってしまいました。







村人たちはみな「金色の魚の言う通りだ」と思いました。
そして、川からの恵みが得られるよう、一生懸命働くようになったのでした。

おわり







(奥付)



(裏表紙)



いかがでしたか?
アフガニスタンでは「人間以外の生き物がしゃべる」物語は、弾圧・排除される傾向にあるそうです。

教育と文化・民話を守る「絵本製作」の活動を、これからもご支援ください。


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