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お知らせ
2人の卒業生 ~ インドのフリースクール ~
お知らせ
2020.10.20
2人の卒業生 ~ インドのフリースクール ~
エルセラーン1%クラブと提携するNPO法人コルカタ・シーズは、これまでインドでの学校建設、フリースクールの運営を進めてきました。
このたび、同法人の山口正則理事長(写真 後列右端)から、フリースクール「シッカミトラ」を卒業した少年と少女のストーリーをご報告いただきました。
山口理事長からのご報告を紹介します。
サジャハン(TOP写真 後列 山口理事長の左隣)とハスナー(TOP写真 後列中央 ブルーのスカーフ)について
ふたりはシッカミトラというフリースクールを卒業しました。
SHIKSHAMITRA (シッカミトラ)とは「共に学ぶ友人」という意味です。
スラム街に住む中学生の年代(約12歳から約17歳)の子どもたちのためのフリースクールで、2005年より開始しました。
子どもたちには制服を提供しました。子どもたちは毎日制服を着てフリースクールにやって来ました。
それは子どもたちにやる気と、公立の学校ではないが、自分はフリースクールで勉強をしていることに誇りを持ってもらうためでした。
このフリースクールはコルカタで成功した中学生を対象にしたスクールということで、一般の公立の中学校の先生も参観に来るようになりました。
すべての科目を詰め込みで教えるのではなく、その子の個性に合ったものを伸ばす教育に重点をおいていることがユニークだったからです。
●サジャハン(写真は山口理事長と)
彼は最も優秀な生徒のひとりでした。
2005年の4年生のときに小学校をドロップアウトし、スラムで両親の廃品回収の仕事を手伝いました。
その2年後、勉強することの必要性を感じ、両親とともにフリースクールを訪れました。
彼がそれまで通っていた小学校は大人数の詰め込み教育でした。
しかし、このフリースクールでの、生徒の自主性を重んじる勉強の仕方に大変共感し、自ら進んで勉強するようになりました。
そして、このフリースクールで初めて、国の検定試験に合格するまでになりました。
この試験に受かると、公立の高校や専門学校を受験することができます。
これは初めてのケースで、ほかの生徒たちの良い目標になりました。
彼はコンピューターの専門学校に通いながら、父親の仕事を手伝い、そして土曜日は自分で週1回のフリースクールを開くようにまでなりました。
彼はこれを「リトルライブラリー(小さな図書館)」と呼んでいました。
スラムに住む子どもたちが本を読み、授業を受ける場所を、彼が作ったのです。
その後、車を購入し、タクシー会社をひとりで立ち上げ、ドライバーとしても働いています。
昨年彼は結婚し、ますます仕事に励んでいます。
彼にとってシッカミトラは自分を育ててくれたところ、自分で生きていこうという「自立の大切さ」を学んだところでした。
●ハスナー(フリースクールのスタッフとして)
彼女はシッカミトラのフリースクールで、国の検定試験に合格した初めての女性です。
女生徒の中ではリーダー的存在であり、憧れの的でした。
ところが2014年、検定試験に受かっていたにもかかわらず、フリースクールの卒業と同時に親の決めた結婚をさせられました。
相手は50代、4人目の夫人として嫁ぎました。しかし最初から親から強制された結婚なので、うまくいくはずがなく、6か月後には体中にあざを作って、家に戻ってきたのです。
しかし両親は彼女をかくまうこともなく、逆に勘当してしまいました。
ハスナーの両親は、彼女を嫁がせるときに、相手の家から持参金として多額の金を受け取っていたのです。
両親はその金で屋台を購入し、商売を始めていました。
そのためハスナーが戻ってくると、その金を返さなければならないことを、両親は恐れたのです。
両親はフリースクールに猛抗議をしました。「こんな勝手な娘に育ったのは、このフリースクールで変な教育を受けたからだ」と主張したのです。
フリースクールは彼女と両親との間をなんとか取り持とうとしましたが、家にも入れてもらえません。
仕方なく、フリースクールの近くに住まわせ、フリースクールのスタッフとして雇ったのです。
その後、会社に勤めながら経理を学び、海外NGOのコルカタ支部で働くようになりました。
そこで知り合った人と結婚し、今はコーヒーショップのスタッフとして働いています。
彼女にとって、国の検定試験に合格したことは大きな意味がありました。
しかしそれ以上に、このフリースクールを通して、人間として大事なことを学びました。
すなわち、人の一生はかけがえのないものであり、どのように生きるかは自分で探して生きていかなければならない、ということです。
もし彼女がこのことを学んでいなければ、最初の結婚で離婚をせず、耐えて夫に仕える人生で終わっていたと思います。
なぜなら「女性は結婚したら、どんな待遇でも我慢して男の人に尽くさなければならない」ということは、インドではごく当たり前の、そしてハスナーの母親の生き方でもあったからです。
このように、ふたりの人生を振り返ったとき、フリースクールは未来に生きていく子どもたちにとって大切な場所だと痛感いたしました。
その活動を支援してくださっているエルセラーン化粧品のみなさまに、改めて感謝申し上げます。
NPO法人コルカタ・シーズ
理事長 山口正則